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2009.05.06 雷神さま
前日に持てる力を全て出し切った。
その足にはもはや歩く力さえ残ってはいなかった。

悩めるエースはこの日も悩んでいた。
その場しのぎのシップはなんの役にも立たない。
辺りに立ち込めるシップの、その匂いだけが虚しく鼻につく。

あたかも老爺のようにトボトボとそしてヒョコヒョコと。
その足元は、短めで履き口にヒョウ柄のフサフサが付いた黒いゴムの長ぐつを履いているかのように映る。
手に持つスティックは杖の様にさえ見えた。

昨晩の酒の席も早退した。
帰り道、脇に抱えた大きな絵画と袋にぶら下げた歯舞昆布しょうゆ3本セット。
彼をあざ笑うかのようにタイミング良く袋を破り横断歩道に転がる歯舞昆布しょうゆ。
その昆布しょうゆも、脇に抱えた絵画のせいで上手く拾えない。

やっとの思いでホテルにたどり着き、脚をケアし心を鼓舞し神に祈り眠りについた。

無駄だった。

コンディションは最悪。
しかし、彼もまた戦士。
心だけは折れてはいなかった。

リンクは戦いの場。
戦場に赴く戦士達。
響き渡る鬨(とき)の声。
We are LAZE!We are LAZE!!

無駄だった。

気合でカバーという言葉は今の彼にはチェンバル語に聞こえた。
痛いものは痛いのだ。

それでも気力を振り絞った。
必死にボールを追った。
相手選手とのチェイス。
戦士の心で追いすがる。
痛む脚。
バランスを崩す。
踏ん張る力は幾ばくか。
耐えてくれ俺の脚。
ピンクの球はすぐそこだ。

無駄だった。

彼はよろよろとリンクに崩れ落ちる。
脚はもう言うことをきかず、重力に身も心も委ねるがごとく静かに、ただ静かに彼は銀盤に膝を付く。

と思った瞬間、皆は目を見張った。
彼が最後の最後に力を振り絞り見せたプレーにある者は言葉を失い、またある者は感涙した。

皆忘れていたのだ。
そしてこの瞬間までは彼もまたそうだったに違いない。
脚は動かないが、手は動くということに。

彼は全身全霊を捧げ裁きの杖を振りかざしたのだ。

稲妻が見えた。

彼は神へと昇華した。

稲妻の衝撃に弾き飛ばされ激突した壁の白い塗料だけをヘルメットに残し彼は係員によって開かれた天国の扉へと向かった。

老爺のようにトボトボとそしてヒョコヒョコと・・・。

Fin

※この物語は一部フィクションです。
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